よりかず式|凡人のためのSNSマーケティング実践録.110
2026/05/12
よりかず式|凡人のためのSNSマーケティング実践録.110
第110回:失敗が恥になる国では、挑戦できる人だけが希少になる/文:よりかず先生
日本人はなぜ失敗を恐れるのか
会社で新しい提案をしたとき、「前例がない」「リスクが残っている」と跳ね返された経験はありませんか。
僕は以前、職場でプロジェクト管理ツールの導入を提案したときのことです。
メンバー間でスケジュールをリアルタイムに共有できる、さほど複雑でもないツールでした。
それほど難しいものではなかったにもかかわらず、返ってきたのは「使い方が分からない」「かえって管理が煩雑になるのでは」という否定的な声ばかり。
そのとき感じたのは、「変えることのメリットよりも、デメリットの方を過大評価している」ということ。
新しいものへのアレルギーとでも言うべき反応が、日本の職場には根強くあると感じました。
この前例主義や失敗を許容しない文化って、日本ならではの光景ですよね。
ホフステッド指数が示す、日本人の意思決定の特徴
こんなふうに、「日本人は集団主義的」とよく言われる。あなたも和を大切にし、個より組織を優先する場面は多いと感じているはず。
でも、これを客観的に測ると、少し違う結果が見えてきます。
世界中の研究者が国の文化を比較するために、国ごとの価値観を6つの項目で数値化したホフステッド指数というものがあります。
権力格差・個人主義か集団主義か・男性性か女性性か・不確実性回避・長期思考か短期思考か・享楽性か抑制性か、の6つです。
この中で「個人主義の強さ」を見ると、日本は65カ国中30位なので、世界平均に近い水準。
私たちが「日本は集団主義的だ」と感じるのは、無意識にアメリカ(個人主義ランキング1位)と比較しているからで、世界全体で見ると日本はむしろ中間に位置している。
では、日本が世界的に突出して高いのは何かというと、不確実性回避と男性性の2つ。
不確実性回避のスコアが高いと、曖昧さや未来の見通せない状況を避ける傾向が強くなる。リスクを徹底的に排除してから動く、前例がなければ動けない、という姿勢につながる。
日本の品質管理や「カイゼン」文化を支えてきた強みの裏側には、このスコアの高さがあります。
僕が職場でツールの導入を提案したとき、否定的な意見が集まったのは、「使ったことがない」「もし失敗したら」という不確実性への不安が、変化を止めていたのだと思います。
恥の文化と男性性、日本独特の失敗への重力
ホフステッド指数で日本が世界と比べて高い「男性性」は、男女平等とは無関係です。
その社会が競争・成果・成功を重視するか、あるいは調和・ケア・生活の質を重視するかを示す指標です。日本のスコアは世界2位。
つまり、日本は世界的に見ても成果主義色の強い社会です。
ただし、日本の成果主義はアメリカとは性質が異なります。
アメリカは「自分がどう振る舞ったか」という内省的な基準で失敗を捉えます。
挑戦して失敗しても「学びがあった」「次は改善しよう」と再挑戦が歓迎されやすい。
一方、日本の成果主義は恥の文化と結びついています。
「失敗したら人にどう思われるか」が最大の関心事になる文化では、一度のミスがキャリアに傷をつけるという強烈なプレッシャーが生まれる。
私自身、学生時代に失敗をネタにされてずっといじられていた同級生を目の当たりにしてきました。そこから学んだのは「目立たないことが正解」という処世術。
就職してからも「失敗は許さない」という空気の中で、失敗しないことだけを考えて仕事をしてきました。
挑戦できるタイプではなかった、というより、挑戦すること自体が危険に感じられたのだと、振り返って思います。
不確実性回避の高さに、恥の文化と成果主義が重なることで、日本社会に独特の空気が生まれている。
失敗が恥に直結する環境では、なかなかチャレンジ精神は生まれない。
希少性が高まる人材の3つの力
では、この文化的な傾向を踏まえて、私たちはどう動けばいいのか。
ここで、もう一つのホフステッド指数の特徴が参考になります。
日本は「長期思考」のスコアが世界3位(1位韓国、2位台湾)と非常に高い。
目標や方向性が定まれば、そこに向けてコツコツと積み上げる力が極めて優れているということです。
問題は、不確実性への耐性の低さがその力の発揮を妨げている点。
裏を返せば、そのハードルを越えられる人には希少価値が生まれます。具体的には、次の3つの力です。
1. 問いを立てる力(解くべき課題を自分で設定できる)
2. 方向性を決める力(不完全な情報でも最適解を選べる)
3. 責任を引き受ける力(結果を受け入れ、前に進める)
日本人は「与えられた問題を正確に、速く解く」ことが得意。
受験勉強も業務の遂行も、その延長線上にある。
しかしAIや自動化が加速する現代において、正解のある問題は機械が解くようになり、人間に求められるのは、「そもそも何を問題にすべきか」を設定し、不確かな状況の中で決断し、責任を持つ力。
これは日本人が苦手と感じやすい領域だからこそ、その力を持つ人の希少性は高まります。
僕が副業を始めたとき、最初は「SNSで知り合った人に、何かを販売するなんて無理だ」って感じていた。
でも、「どうすればうまくいくか」をひたすら考え、プライドを捨てて年齢に関係なく経験者から貪欲に学んだ。
その中で、問い・決断・責任という3つの力が鍛えられていったことを、今になって実感しています。
会社の仕事でも、課題設定に関われる機会があれば積極的に手を挙げたり、たとえ研修でも、ケーススタディ形式の内容ならその力は育つ。
まず小さな挑戦から始め、再挑戦を奨励してくれる環境に身を置くことが、成長のスピードを大きく変える。
起業・独立・副業といった戦略を考える初心者にとっても、この3つの力を磨くことが最初の一歩になる。
これは僕の経験談ですが、日本人は不確実性回避が強く、問いを立てる力のある人は希少価値が高いと知り、苦手だと感じていたことが実はチャンスだと見えるようになった。
今もその力を磨くために、日々努力を積み重ねています。
おわりに
日本の慎重さや失敗への恐れは、個人の弱さではなく文化的な構造から来ているから、それを知るだけで、見える景色が変わる。
そして、その構造を理解した上で「問いを立て、決断し、責任を引き受ける」力を意識的に育てていくことが、これからの時代に自分の価値を高める一番の近道となります。